墜落遺体
- 2006/01/01 01:01
- カテゴリー:書籍紹介
Mon, 18 Jun 2001 23:34:35 +0900
本棚を整理していたら以前読んだ本が出てきました。
「墜落遺体」という本です。
思わず読み返してしまいました。
この本は16年前、あの御巣鷹山に墜落した日航機123便の520人、全遺体の身元確認までの127日を最前線で捜査の指揮にあたった責任者が、克明に、そして、淡々と語った壮絶な記録です。
私は読み終わるまでに10回は泣きました。
以下はその一部です。
食事がまだの方は食後にお読みください。
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私は、愛する肉親を失った数千人の遺族の究極の悲しみの場に立ち会った。どれもが、私の記憶の奥底に永遠に封じ込めておきたい凄惨な情景である。できることならあの夏の出来事だけは私の記憶の中からすべて消し去りたいと思う。でも夏が近づくとあの情景が、もぞもぞと這い出してくる。
遺族の極限の悲しみが集約された体育館の中で、各々の職業意識を超えて、同じ思いで同化していった一つの集団の記録を決して風化させてはならないと考えて本書を執筆した。
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挫滅した顔面に三つの眼球がくっついていた。古川教授が綿密に調べた結果、頸部辺から、他の人の頭部、顔面が信じられないほどの力で加わって入った、ということであった。つまり頭の中に頭が入ったのである。
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泥の塊と木の枝のようなものが一緒になっている。検死官に、「それ看護婦さん、洗ってください」と言われる。バケツの水で少しずつ泥を落としていくと、小腸と大腸らしき内臓であった。小枝のようなものは大腿部骨頭で、炭化していた。内臓の中から紙片が出てきたので捨てようと思ったら記録していた警察官に「なんですかそれ・・・」と言われ手渡す。それは領収書だった。領収書の宛名から誰の内臓であるかの手がかりにすると言う。内臓だけが戻される遺族の思いが頭をよぎる。ビニール袋の中に内臓だけをいれて棺の中に収めるなんて考えられない。内臓をさらしで丁寧に巻いてお棺に収めた。パネル一枚で仕切られた遺体安置のフロアから「お父さん・・・わぁ!」と泣き叫ぶ遺族の悲惨な声が、脳膜に突き刺さるように響く。思わず自分も叫びたいような衝動にかられる。
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その河野(赤十字看護婦婦長)が最初に処理した遺体は幼児であった。それも頭部だけである。2~3歳だろうか、あどけなく口を開いている。坊ちゃん刈のような髪の毛がうっすらとある。ほとんど傷らしいものはない。きれいな、それこそ天使のような顔をしていた。その坊ちゃん刈の髪が、検死でその首を動かすたびにはがれてゆくんです。そう「抜ける」のではなく「はがれる」という言葉そのままに、全部はがれて落ちてしまいました。ガーゼを水に濡らして、この子の親になって、この子の気持ちになって、やさしく話しかけながらそっと何度も、顔を拭いてやりました。と当時の胸奥のつらさを静かに吐き出す。河野は他の看護婦に手伝ってもらい、子供の胴体部、手、足の形を相当な時間をかけて作った。頭だけを棺に入れるなんてとてもできないと・・・。河野婦長の班が処置した遺体はほとんどが離断遺体で損傷もひどかった。頭部欠損、両手両足欠損、下半身欠損などがほとんどである。蛆は憎々しく、丸
く肥え、遺体から湧き出てくる・・・。
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12日の夜からの丸4日間は一睡もできなかった。<中略>21日頃から視野も狭くなってきた。まっすぐに歩けないし、前のほうしか見えなくなってきた。人の声も後ろのほうからするが、誰が呼んでいるのか、どこから呼んでいるのかわからない。神経疲労で幾日も眠っていないのが原因だ。体中の力が抜けてしまい、目の前がいよいよ狭くなってたっていられなくなり、体育館裏の芝生の上に寝転んだ。耳元で、「ドクターの言うことだから黙って言うことを聞け、お前死ぬぞ!」という声がした。
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ちょっと重過ぎましたね。
しかし、いろいろなことを考えさせる本です。
講談社
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