懐かしき法律の穴
- 2007/01/05 00:33
- カテゴリー:法律
Date: Tue, 05 Jun 2007 00:33:53 +0900
米国籍の赤ちゃんへの贈与について、日本の国税当局から申告漏れが指摘されたとか。
中央出版の社長の孫というこの赤ちゃんは、米国で生まれ、米国籍を持っている(日本国籍はない)らしい。
以前紹介しましたが日本と米国では贈与税の考え方が違います。
日本では、贈与税というのは、受け取った側が支払うものという考え方です。
しかし、米国の税法では、贈与税はあげる側が支払うものという考え方なのです。
つまり、この考え方でいくと、日本人が米国人に贈与した場合はどこからも課税されないことになる。
日本の税法ではもらった側が支払うものなので、米国人に贈与した日本人は課税されない。
米国の税法ではあげる側が支払うものなので、日本人から贈与された米国人は課税されない。
さて、ここで問題になるのは日本人とか米国人の定義。
国税当局の考え方は、国籍がどこか?という問題ではなく、「日本の居住者」「非居住者」という考え方をします。
日本人であっても「生活の居が外国にあり、将来に渡って日本に帰国することを意図していない」場合でないと、日本の非居住者と認定されないようです。
もちろん、未成年の場合では扶養者が日本に生活の居を構えているのであれば、非居住者にはならない。(日本からの仕送りで生活しているとかは問題外。)
このへんは、明確な法律的区分があるわけではなく、行政の裁量によるとことが大きく、それが今回のようなケースにつながるようです。
今回のケースでは中央出版の社長としては金融機関から持ちかけられた節税方法であって、違法という認識はなかったらしい。
これだって、日本からの送金方法を考えれば捕捉される事はないだろう。
って、合法であれば、捕捉も何もないのだが。
これを勧めた金融機関は最後の詰めが甘いと思う。
プロの仕事であれば、送金時に非居住者への贈与を確定させるべきだし、後々、「申告漏れ」などと言われ争うのは最悪。
完全に合法の手段であることを確定できないのであれば、普通なら、最低でも捕捉されない手段をとるだろうに。(日本から海外への送金方法については「マネーロンダリング」橘玲著などに詳しいので興味のある方はどうぞ。)
この税法の穴はかなり前から一部では指摘されていた事であり、私自身、15年程前に所属していたコンサル会社でも話題になっていました。
話題になっていたどころか、当時この会社で販売してたサービスにFAX情報配信システムというのがあった。
この米国と日本の税法の抜け穴をついた節税情報を配信するにあたって、私のような税理士資格も持たない者が書いた方が、素人にもわかりやすく理解できるように書けるのではないか?ということで、私が担当していました。
内容も問答形式で面白おかしく書いたのを思い出します。
当時はアメリカの学士号を金で買うようなサービスもあったので、それにからめて、金持ちの息子を米国に送り込み、大学卒業の資格を取らせて、そのまま親の会社の米国事務所の事務所長みたいな位置付けで数年滞在後、「帰国の意思なし」を前面に出しつつ、投資信託などを組み合わせながら贈与するプランなどを、真剣に考えていたりしましたっけ。(笑)
その場合は申告不要であるにもかかわらず、わざわざ申告を行うべし、などと議論していました。
あとからあれこれ難癖をつけられることを回避するには、むしろ申告すべき、という話です。
「帰国の意思なし」が認められて、日本の非居住者との認定さえされれば、課税はされない。
これを確定させることが大事。
いったん、申告時に非居住者が認められれば、5年後に状況が変わって帰国しても関係ない。(はずだ。)
と、そんな理屈ですね。
結局のところは議論ばかりで実際のビジネスには結びつかなかったというのが現実ではありますが。
こんなのをバンバン実施していたら、今頃は金持ちになっていたかもしれない。(笑)
なんだか懐かしい話を思い出すニュースでした。