イランとトルコとイスラエルの話
- 2011/06/11 23:55
- カテゴリー:グローバル
中東のパワーバランスがここ数カ月で激変してきていますね。
今日の日経新聞には「トルコのギュル大統領が、パレスチナ自治政府が目指す国連での国家承認に賛成の立場を表明した。」と書かれていましたが。
この記事だけ読んでも、あまりピンとこない方も多いかと思いますので、少しここ最近の背景を解説してみたいと思います。
アラブの強国というと、以前はイラクがありましたが、これは米国にボコボコにされて、現在は国家の体をなしていない。
その後、チュニジアの民衆デモを皮切りに各国に飛び火した民衆の民主化デモは、強国(かつ、親欧米)だったエジプトのムバラクを失脚に追い込んだ。
現在、リビアもNATOと民衆を敵に回し、完全な戦争状態。
そんな中、目立って強力な国家となってきているのがイランだ。
正式名称「イラン・イスラム共和国」。
1979年のルーホッラー・ホメイニー師によるイラン・イスラーム革命により、、、なんて話をここでしてもしゃーないですね。
歴史とかが知りたい人はWikipediaでも見ていただけるとよろしいかと。
とりわけ、イスラエルが最も脅威と感じているのは間違いなくイランであり、事実上、有効な手を打てないで、手をこまねいている様にすら見える。
イランはここ2~3年で核兵器を開発できると言われており、現在は、その最終段階に入っているとも言われている。
戦争大好きなブッシュ前大統領は「イラン空爆」を口にしていたが、イランも軍備増強をひたすら続けており、簡単には攻撃できない状況となってきているのです。
アメリカにとっては、石油基地である中東のパワーバランスと言う話でしかないが、イスラエルにとっては国家存続にも繋がる超重要事項。
元々、イランは「世界地図からイスラエルを抹消すべき」と叫んでいた国のひとつだ。
これまで、イスラエルは周辺国が核を持とうとしている事がわかると、必ず先制攻撃を仕掛け、そのことごとくを破壊してきている。
1981年にはイラクの原子炉を空爆し、破壊している。
その後、2007年にはシリアの核施設を爆撃している。
(このシリアの核施設は北朝鮮が技術協力していたと言われている。)
そのイスラエルが、直接攻撃に出られないのは何故か?
世論が黙っていないから?
いーや、世界中を敵に回しても自国が生き残るためには戦争を起こす国だと思いますよ。これまでもそうしてきたし。
まず、シリアや当時のイラクとは比べ物にならない程の軍事力がある。
かつてアフガニスタンからソ連空軍を一蹴したスティンガー地対空ミサイルは元より、短距離地対空ミサイルシステム「TOR─M1」、最近ではSA300なども第3国経由で保有していると報道されている。
もちろん、戦闘機も自国生産している上に、西側・東側、旧両陣営の戦闘機を多数保有している。(西側戦闘機ではF14トムキャット等)防空にはジャブジャブと金を使っているのだ。
次に、地理的条件。
空爆しようにも、イランとイスラエルは距離が離れている。
すぐそばの、イラクやシリアを空爆するのとは訳が違う。
ヒット&アウェイ、とは、いかない。
ヨルダンやシリア、更にはイラクの先にイランはあるので、爆撃するには、往復の安全も確保せねばならない。
これらが理由で、イスラエル空軍が爆撃しようとしたとしても、3割近くはイスラエルには帰還できないだろうと言われている。
軍備の中でも金と技術の塊の様なモノが空軍だ。
パイロット一人養成するのには、膨大な時間と金がかかっている。
最新鋭戦闘機は金の塊の様なモノでもある。
その貴重な戦力を、3割も失う可能性がある作戦は、軍事戦略上、遂行困難である。
更に、イランは国内の多数箇所に核施設を持っている。
数十箇所に分散された施設の一部は、地下深くに十分な掩蔽をされて隠されている。
その全てを破壊し尽くすことは不可能であり、膨大な損失を覚悟して作戦を実行したところで、その成果は必ずしも保証されないわけだ。
だから、イスラエルやアメリカはイランの核施設を爆撃できない。
近い将来、アラブ諸国、それもイスラエル周辺諸国では初めての核保有国が現れる。(イスラエル以外では初めてという意味)
今現在の、世界パワーバランスゲームでは、一度核を保有してしまえば勝ちである。
現に、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮から、誰も核を取り上げることはできない。
一度、核保有クラブの一員となったら、お互いを尊重しつつ、抑止力を発揮しながらやっていくしかないのだ。
新たな核保有国となろうとしているその国は、アラブ周辺の産油国からのタンカーの7割が通ると言われているホルムズ海峡を握っている。
アラブのパワーバランスを考える上で、地理的にも軍事的にも重要な要素を握っているのだ。
さて、冒頭の日経新聞の記事。
「トルコ大統領がパレスチナ国家を承認に賛成」という記事ですが、つまり、言い方を変えると、イスラエルを認めないということです。
トルコというガチガチのイスラム原理主義ではない国の大統領の発言です。
イランが言っているのとは違います。
トルコは国民の99%がイスラム教徒ですが、ヨーロッパの一員としてEU加盟を目指している国です。
何より、軍事的にはNATO(北大西洋条約機構)の古くからの一員ですし。
そんな西側の国がイスラエルを否定する発言をした。
大きな空気の変化を感じるのですが、気のせいですかね?
パレスチナを認めるということは、イコールイスラエルを否定することです。
エルサレム周辺の地をパレスチナと呼ぶか、イスラエルと呼ぶか?という話なので、両方というのは有り得ない。
(AさんはBさんの娘を強姦した。逆にBさんはAさんの息子を殴り殺した。そのAさん、Bさんの二人が、今すぐ仲良く一緒に同じ家には住めない。)
イスラエルというアラブ諸国の中で、強大な軍事力を持つ国の存続という、超重大な事態に繋がっている話なのに、あんまし報道されていませんよね?
日本は原発縮小していくんでしょ?
少なくとも、今後、原発拡大路線はないですよね?
明日の(この夏の、そして来年の)燃料はどうするんでしょう?
クリーンエネルギーとか、もちろん推進は必要だけど、再明後日の夢を見る前に、明日の燃料を確保した上で、明後日の布石を打たねばならないのではないでしょうか。
あ、いやいや、民間レベルでは無くても、少なくとも国家レベルではね。
管ちゃん、今の中東情勢とか、どんだけ認識しているんだろう?
管さんだけでなく、谷垣さんと、ついでに小沢さんも一緒に消えて欲しい。
(あと、マスコミも、顔洗って世界を見渡してみて欲しい。)
この国は、こんなことをしている場合ではないと思うのよ。