予想は嘘よ
- 2010/04/14 21:47
- カテゴリー:書籍紹介
突然ですが、世の中のほとんどの予想は嘘である。
3次元に棲む僕らにとって、過去を知ることはできるが、未来を知る事はできない。大企業だってできない。誰もできない。
知ることができないから予想する。
未来は「予め想う(あらかじめおもう)」ことはできるが、予測する事はできない。
それを勘違いしている人がいかに多いことか?
あなたの会社にも予算計画があると思う。
ちょうど新年度を迎えた会社も多く「今年度予算は昨年度予算の10%Upを目指します!」とか、各社計画を立てている。
近年、この計画に対する縛りが益々厳しくなってきてはいないだろうか?
今日の話は「予算計画なんてクソ食らえ~」という話です。
さて、最近は予測しづらい世の中になってきていますね。
20世紀の日本は何度かの戦争があったにせよ、それ以外の時は割と安定的に成長してきました。
人口は増え市場は大きくなり、産業の進歩によって新たな需要が生まれ続けてきた。
自分の組織の次年度計画を立てる際、国や地域の成長と同じ位の成長率を見込んでおけば、多くの組織では大きく違うことはなかった。
しかし、21世紀のこの国では、人口は減り市場は萎み、年金問題や多額の国家負債に喘ぐ状態を想うと、更にネガティブに成らざるを得ない。
継続的、安定的な成長などは、困難極まりない話だ。
つまり、会社に対して「成長率」という言葉は、一律には使うことができなくなってきている。
市場とともに皆が成長するのではなく、新たに誕生する組織の数以上に滅んでいく組織がある。
なので、成長すると言うよりも、生き残ることが大切なのである。
さて、そんな中での次年度計画。
いつもの様に「昨年度の120%を目指す」何て事を言い続けている企業は、滅んでいく口かもしれないですね。
目標設定自体で滅ぶとか、生き残るとかと言うことはできないのですがその程度の時代認識では生き残っていくことは難しいだろうという意味です。
これからの組織で求められているのはいかに計画し、計画通りに経営を進めるのか?では、なくなってきている。
計画することによるデメリットが、大きく世の中に蔓延しているから。
お役所仕事の代名詞として、年度末の集中工事がよく言われる。
年度内に予算を使い切ってしまわないと、翌年の予算に影響する。
使い切らない予算は不要な予算と見做され、翌年度には削減対象とされるというものだ。
年度末に近いの営業会議で「幸い我々の課は予算を達成した。これ以上の売上の積上げは翌年度目標を引き上げることに繋がるので、今月以降の売上数字は、できるだけ翌年度に繰り越すように。。。」なんていう課長の訓示がある。
IRの観点やメインバンクの担当者からは、経営計画の大幅な上方修正は「経営者の計画管理能力の欠如と判断される可能性がある」なんていうことも聞く。
ある上場企業の例では「売上予算に対し下方修正がマイナス査定対象であることはもちろんだが、今年度からは、上ぶれ修正も130%を超えるとマイナス査定になる制度に変わった」という会社が実在する。
数ヶ月かけて、1年の予算計画を立てる会社もたくさんある。
バカじゃなかろうか。。。と思う。
今取れる売上を、今取らないで予算通りにすることが、立派な経営なのだろうか?
残しておいたその売上は、翌年度に本当に残っているのだろうか?
地道な営業努力がいつ花開くか?などは正確に予想できるものではない。
今取れるものを、今取らないでいつ取るのか?
明日には、その需要は、まず確実に残っていないのだから。
ただ、それぞれの組織に所属する人達にとって、上記の行動は自己保存の法則から見たら、正しい。
誰だって、評価されるための行動を取るのだ。
つまり、この社会の中で戦っていくルールがおかしいという話だ。
予定は未定である。
これは世の中の真理であり、予測することは不可能である。
では、どうするのか?
いかに計画通り進めるのか?ではなく、いかなる事態が起きたとしてもあらかじめ想定しておき、用意しておいた選択肢を実行していくか?が大事なのではないだろうか?
言い方を変えると「どんなカードを切るか」であり、「どんなカードを用意しておくか」という話が大事なのだと思うのだ。
「食い逃げされてもバイトは雇うな」の著者(山田真哉氏)は言う。
天才CFOの作った緻密な計画よりも、グラビアアイドルの戦略の方が優位性が高い、と。
天才CFOの過去分析と自社分析、社会経済の未来予測に基づく経営計画を忠実に実行することは、変化の激しい現代においては困難である。
むしろ、グラビアアイドルとしてデビューして、その後も競争の激しい芸能界で生き残っている彼女達に学ぶべきであると。
彼女達はグラビアアイドルとしてデビューした後、見た目の話だけではなく、話術であるとか、演技だとか、歌であるとか、楽器だとか、自分の長所を伸ばす努力をする。
そして新しい若いアイドルにその座を奪われても、いつの間にか司会業に転身していたり、気象予報士になっていたり、自分の居場所を作って生き残っていく。
組織も同じで「何を切る?」の選択肢となるカードをいかに増やすか?
が、重要課題になるというのだ。
まったくもって、その通りだと思う。
さびれた商店街の文房具屋。
昔は店の前でワゴンセールをすると売上が増えたのだが、最近は店の前を通る人すらいない。
必要なのは予算計画ではなく、インターネット販売かもしれないし、郊外の国道沿いに出店予定のショッピングモールへ出店することなのかもしれないし、文房具問屋の在庫処分品を発展途上国に売り込むことなのかもしれない。
いずれにせよ、カードを増やし、次の手を打つ必要がある。
カードを増やすと言うだけでは、会社の指針にならないのではないか?
という意見もあるだろう。
ま、それもそうです。おっしゃるとおり。
では、脱予算経営をしている会社はどのような基準で見ているのだろうか?
スウェーデンの銀行やフランスの化学メーカー等では予算経営をやめて、KPIなどの新たな基準を設定して企業経営をしている。
(KPI=Key Performance Indications=目標に向けての達成度合いを 定量的に示したもの。)
具体的には「売上高」とか「利益率」でみるのではなく、「在庫水準」「品切れ率」「解約件数」「顧客訪問件数」「従業員離職率」などの数値を定期的に取得し、プロセスの進捗管理をしていくという方法だ。
絶対的な予算目標とは違い、これらの数値を同業他社と比較したり、市場や社会の変化に応じて、対応していくために活用していくわけだ。
IR情報を目を皿にして読んでいる投資家の方。
投資家の動向が気になる上場企業の経営者の方。
顧客企業へ融資の可否を決める金融機関の方。
見るべきは予定通りか否か?ではなく、何をしようとしているか?
どれだけカードを持っているのか?だと思うのです。
一緒にこの生きづらい時代を生き抜きましょう。
参考文献(昔のベストセラーね)
「さおだけ屋はなぜつぶれないのか?」
「食い逃げされてもバイトは雇うな」
「食い逃げされてもバイトは雇うな、なんて大間違い」
山田真哉著
上記3部作は「さおだけ屋」が1巻で、3冊続きの連続ものです。
僕的には3冊目の「なんて大間違い」が最も面白かったですね。
数字との付き合い方から、数字をうまく取り入れた説得力のある話し方、それに、今回みたいな話まで、幅広く楽しめる本です。
是非どうぞ。
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