大学4年生になる娘への手紙(社会人になるあなたへの戯言)
- 2020/03/07 18:29
- カテゴリー:価値観
大学4年生となる娘へ
就職ということについての、僕の思うことを書いてみました。
この通りにする必要はありませんが、日本社会で数十年間、食ってきた人の一つの意見として読んでみてください。
1.仕事について思うこと
2.お金について思うこと
3.業界を考えるということ
4.職種を考えるということ
5.幸せになるために
この5項目について書いています。
1.仕事について思うこと
仕事とは、何でしょうか?
世の中には親が大金持ちで、親の遺産で一生遊んで暮らせる、という人もいます。
しかし、ご存知の通り、うちは普通の家です。
なので、あなたも、好むか好まないかを問わず、これから長い人生、自分で稼いで食べていかねばなりません。
仕事というと、お金を稼ぐこと、と考える人が多いですが、必ずしもそれだけではないと思います。
お金についての考え方は次の項にゆずるとして、ここでは仕事ということを考えてみたいです。
仕事がないと暇である。
人生において、遊んで暮らせるというのはバラ色の生き方に見えるかもしれません。しかし、人間というのは無いものを求める習性があるのか、遊んで暮らしていると仕事というのもを求めるもののようです。
お金のために働くのではなく、仕事というものを通して、社会貢献したいと思ったり、そんな高尚な考えはなくても、単に自分を高めてくれる経験をすることができたり、仕事というものを通して知的好奇心を満足させてくれたりすることは楽しいことです。
できなかったことができるようになる、というのは本能的な楽しみなのでしょう。
そして、仕事をしていると、必然的に人間は成長していくようです。
日本では、本格的な資本主義社会が始まって100年くらいでしょうか。
その間、蓄積された知見に個人が触れることができるとしたら、それは仕事というものを通して知ることができるでしょう。
蓄積された知見と言ってもわかりづらいので簡単に言うと、合理的な組織運営の方法であったり、品物やお金を扱う合理的かつ安全な仕組みであったり、物作りの膨大なノウハウであったり。
現代社会は、さまざまなプロフェッショナルの知見によって成り立っています。
満員電車に乗っている風采の上がらないおっさん一人ひとりが、なんらかのプロフェッショナルとして社会の中で役割を担っているのです。
もちろん、プロのレベルに達していない人も中にはいるでしょうし、複数の分野でプロとして活躍する人もいる。
現代社会の中で生きていくのであれば、少なくとも一つの分野でプロフェッショナル性を持たないと、生きづらい世の中となってしまうでしょう。
なぜなら、プロフェッショナルとは、他人からお金をもらうことにふさわしいレベルのサービスを提供できる人ということだからです。
つまり、社会の役に立てる人=プロということです。
(いや、俺はゼネラリストになりたいと思っているので関係ない、と考える人がいますが(←若い頃の僕がそうでした)ゼネラリストというのは複数のプロフェッショナル性を持つ人のことだと社会人10年目位に気付きました。)
他人からお金をもらうということ、とはどういうことでしょう?
最も単純化して言ってしまえば、人の役に立つ、ということです。
その人にはできないモノやサービスを提供することで、その人の問題解決をすることです。
僕は陶芸ができませんし、材料や道具も持っていません。
だから、お茶碗はお店で買ってきます。
それが問題解決です。
そんな個人レベルのことから、組織レベルの問題解決をすることが、あらゆる仕事というものの本質です。
個人レベルの問題解決は想像できる話だと思いますが、組織レベルの問題解決とはどういうことでしょう?
この組織レベルや企業レベルの問題解決ということは、社会に出る前の学生にとって想像しづらいところではないかと思います。
例えば、ビルを建てるということ。
これは人々の英知が集結したノウハウの塊です。
コンクリートに含まれる水分量から面積当たりの鉄筋の本数といった基本的なことから、設計ノウハウ、建設現場での安全管理に至るまで、これまでの膨大な失敗から学んできた方法が、仕事というものを通して脈々と受け継がれています。
モノづくりだけではなく、サービスでも膨大なノウハウが蓄積されており、それが受け継がれている。
ITサービスは、単にITサービスと一言で言われることも多いですが、その世界は細分化され、専門化されている。
僕はITサービスの中でも、ネットワークエンジニアと言われる分野で今は仕事をしています。
ネットワークエンジニアとは、主に通信インフラに関わる設計構築や保守運用業務を行っています。
具体的にはルーターやスイッチ、ファイヤウォールなどの設計構築したり、構築された通信システムを運用するとか。
そこにはルーティング技術とか、VLAN技術とか、アクセスリストとか、スパニングツリーとか、とか、とか様々な技術が使われて、安全にかつ、合理的にシステムが動いています。
流通業であっても、ノウハウ蓄積は仕事を通して濃縮されており、単にトラック1台では実現できない総合システムとしての物流だったり、そのインフラを効率よく運営するノウハウがあります。
国際間貿易を担う仕組み一つとっても、さまざまな高度化した技術が駆使されています。
モノを運ぶということだけでも、空輸なのか海運なのか?から始まって、コンテナ輸送をするのか?RORO船を使った方が経済的合理性があるのか?とか、そんな手段一つの選択にしてもプロのノウハウというのがあるわけです。
金融業でも、さまざまな技術があります。
金融システムのリスク回避にオプション取引が使われたり、商品市場のリスク回避のために先物市場があったりします。
(例えば、大規模な自然災害での商品市場の高騰(気候変動で大豆が取れないとか)のリスク回避のために、あらかじめ未来の期日での値段を決めておくというのが先物市場の考え方です。)
それらの専門技術や専門知識を提供することで、サービスを受ける側としては自分や自分の組織だけではできないことが実現され、それに対して対価が支払われる。
やはり学生の頃には、見えずらいのがB to Bビジネスでしょう。
(BはBusinessのBです。対してB to CビジネスのCとはConsumerのCです。)
B to Cビジネスのコンシューマー(=個人客)は自分個人にも置き換えられるので容易に想像できるでしょう。
仕事として本当に面白いのはB to Bのビジネスではないかと僕は思っています。(B to Cビジネスでも規模が大きくなると必要な技術レベルも上がりますし、B to Bの要素も必然的に含まれてくるので、区別が難しくなります。例えば、今のAmazonは小売ビジネスという意味ではB to Cですが、法人相手のビジネスも多数手がけているのでB to Bビジネスもやっている。)
そして、この世界は奥が深く、また、報酬も膨大です。
個人に対する問題解決とは比較にならない専門性が必要ですが、その報酬も桁がいくつも違ってくると同時に、もっとも得難い無形の利益として、高度な知見の蓄積が自らにも身につくのです。
2.お金について思うこと
お金によって幸せになることができるでしょうか?
お金さえあれば幸せになれるとは思っていませんが、多くの苦痛や不幸を取り払ってくれることは間違いありません。
たくさん持っていても、邪魔にはならないのがお金でもあります。
ただ、お金を得ることにあまり興味がなければ、この項目を読み飛ばしていただいてOKです。
あなたもアルバイトなどを通して、お金というもののありがたみはご存知の通りだと思いますが、お金を効率よく稼ぐにはどんな方法がよいのでしょう?
「金持ち父さん貧乏父さん」という本があります。
僕の人生を変えた数冊の本の中の1冊です。
この本の中身を要約すると、次の通り。
・モノには資産と負債がある
・職業は4つに分けられる
この二つのことが書かれています。
最初の資産と負債の話。
ロバートキヨサキ(金持ち父さんの著者)のいう負債と資産はそれぞれ以下のモノをいいます。
負債例
自宅、自家用車、腕時計、宝飾品等
資産例
賃貸アパート、業務用車両、株式、債券、ビジネス等
要は、金を生み出すか否か?という話。
金を生み出すものを手に入れ、金が出ていくものを所有しないということ。
職業は4つに分けられるとはどういうこと?
・従業員(いわゆる会社員)
・個人事業者(医者、弁護士とか)
・経営者
・投資家
これは下に行けば行くほど、稼げる職業になっています。
それぞれ、桁が違ってくるでしょう。
詳しく知りたかったら、「金持ち父さん貧乏父さん」を読んでみてください。
金持ち父さんとは違った面でのお金の話。
前の項目で、仕事とは問題解決をすること、と書きました。
その問題解決のレベルが高くなればなるほど、解決できる人が少なければ少ないほど稼げる仕事となります。
個人向け問題解決よりも組織や企業向け問題解決の方が、数桁多く稼げるという話も書きました。
それは、組織や企業の問題解決では、より専門性が高い問題解決能力が必要だからです。(例えば、B to Bビジネスでは、時給5,000円なんて別に珍しくありません。)
つまり、より合理的に稼ぐには、自分の専門性を高めること、この一つに絞られます。
そして、複数の専門性を持っていたらより良いでしょう。
問題解決能力を高めるということはそういうことです。
ここでは最も重要な話を一つだけ。
問題解決能力を高めるのはどうしたらよいのでしょうか?
本を読んで勉強する?
資格を取る?
学校に行く?
いやいや、間違ってはいませんが正しくはないです。
お金をもらってスキルを磨くのです。
お金を払ってスキルをつけようとしても、たいてい失敗します。よっぽど頑張らないと。
日本の新卒大学生はほとんど使い物になりません。
僕自身も同じでした。
では、どうするか?
その仕事は自分の考える方向のスキルを磨いてくれるか?
その観点で仕事を選んでください。
重要なのは、給与の額や福利厚生ではないのです。
お金をもらってスキルを磨くのが最も成長が早く、実践的技術になります。
学校や本で学ぶ理論も大事ですが、実際に役に立つ実践的技術は現場からしか学べないことも多いのです。
10年後にどんな自分になっていたら嬉しいのか?
まず、それを考えましょう。
そして、その方向に進めそうなスキルを磨ける仕事をしましょう。
それを意識するかしないかで、生涯年収は数億は違ってきます。
3.業界を考えるということ
問題解決をすることによって対価が得られる。
そして問題解決をするには専門性を持つことが大事。
そうは言っても、人間、興味のないことは続かないもの。
興味の向く方向であれば、続けることができる可能性は増します。
人によっては、私はこれをやる、というのがはっきりしている人もいます。
ごく稀ですが。
そんな方は、この項目は読み飛ばしてください。
ほとんどの人にとって、学生を終え社会に出る20歳前後で天職なんか見つかるわけがありません。
だって、まだ、社会全体のごくごく一部しか見ていないのですから。
もし、あなたがそんな状態であるなら、これまで見ることができなかった世界を見ることができる業界を選んでみたらよいのではないか?と思います。
僕は大学4年の頃、将来経営者になりたい、と思っていました。
そして、その勉強ができる業界は何か?と考えて、経営コンサルティング会社に就職しました。
その会社は、税理士が社長のコンサルティング会社で、経営について学ぶことができました。
学ぶというより、その会社の顧客であるたくさんの企業の経営を目の当たりにすることができました。
最初は意図に反して、コンサル部門ではなく会計部門に配属され、法人税の決算書の別表を書いていました。
結果として、決算書というものが自分にとって身近な文書の一つになりました。
会計の仕組みを知ることができましたし、様々な節税方法があることも知りました。
そして、その分野でその後専門性を高めていく、貴重な友人達を得ることができました。(←当時から続く友人は税理士として仕事をしている奴もいれば、病院経営のコンサルタントをしている奴もいるし、彼ら(ただの同期だが)は、かけがえのない僕の人的財産です。)
経営コンサルタント以外でも沢山の業種をみることができる仕事はあります。
法人相手の金融業もそうだろうし、企業と企業をむすぶ商社だってそうです。
どの業界で仕事をしていくのか?を見極めるための業界選び、でもよいのです。
ただ、その後、どうやって生きていくのか?の基本的な部分は20代で考えるのがよいですよ。
30代未経験というのは、乗り越えるにはとてもハードルの高いものですから。
(僕はIT業界に入ったのは35歳からです。)
4.職種を考えるということ
業界を選んだら、次は職種を選ぶ。
職種とは、営業職とか技術職とか、要はどんな部署への配属を希望するのか?という話。
僕は経営者になりたかったという話を書きましたが、そこから考えた職種が営業職でした。
経営者として、人に任せられる仕事と任せられない仕事があると思っていて、たとえば会計業務であれば、税理士事務所とか会計担当に任せればよい。
労務人事も、基本方針を示して、それを実現するのは担当を雇えばよい。
どうしても人任せにできないのは(特に起業当初は)営業部分だと思ったのです。
他の部分は任せられても、誰も自分のために仕事を取ってきてはくれない。
仕事が取ってこれるなら、その人は、もはや経営者、もしくは個人事業主だ。
そして、僕は人と話すのが苦手だった。
引きこもりのパソコン少年だったし。
苦手克服のためにも営業職を選んだ。(←この考え方はあまり勧められない)
まぁ、この職種選びは、個人の好みかな。
また、就職した時に希望通りの職種に就けるかどうか?も、運によるところもあるからね。
5.幸せになるために
幸せになることを誰しもが望んでいる。
そして、誰しもが、幸せになる権利を持っている。
どうしたら自分の心が幸せを感じるのか?
皆、それを追い求めて生きている。
永遠のテーマですな。
幸せの対極に位置するもの、それは不幸。
いくつかの不幸はお金で解決できる。
お金がない状態で、これらの不幸が降りかかってくると地獄であり修羅となる。
お金で解決できない不幸もあるけど、それはそれで問題解決していくしかない。
一般の人にとって、仕事をしている時間は長い。
起きている時間の大部分は仕事をしている、という人が日本人のほとんどではないだろうか?
それだけ長い時間を費やす仕事というもの。
大学4年生となる数か月間が、大きな転機です。
大学卒業の新卒学生、という立ち位置は、一生に1度しかめぐってきません。
この世には、新卒学生しか採用しない会社というのもたくさん存在します。
大企業の歯車になるのは嫌だ?
でも、あなたは大企業の歯車って自分の目で見たことがありますか?
大企業の歯車って、悪いことばかりなのでしょうか?
大企業だからこその、合理的なシステムもそこには存在しているし、それを知ることができるのは中の人と、その周辺の人達だけです。(もちろん、大企業病とも言われるネガティブな部分もあります。それも自分で見てみなければ理解はむずかしいでしょう。)
僕はいくつもの大企業の歯車とその仕組みを見てきました。
それは、僕にとっての仕事上の貴重な財産です。
今現在は、それらを見てきた上で、それらの経験を使って、自由に仕事をさせてもらっている。
チャンスというのは、すべての人に均等に降り注いでいます。
しかし、そのチャンスをつかむことができるのは、その時に準備ができている人だけです。
準備をしていない人は、チャンスが目の前にあることすら気付かないでしょう。
今、この数日間、自分を探求してください。
自分の心を掘り下げてみてください。
君に幸あれ。
父より。