なんだか、Twitterなどを眺めていると、いろんな言葉がごっちゃになっている様な気がするので解説します。
「メルトダウン」「臨界」「核爆発」「水素爆発」等などの言葉が、混同されている様に思うので、それぞれの言葉を整理してみます。
まず、メルトダウンは日本語で言うと「核燃料の溶融状態」を指す。
核燃料はそれ自体が中性子を出し、その中性子が当たった周りの核燃料は、さらに核分裂を起こし、中性子を出す。
核燃料の詰まった燃料棒が原子炉には何本も刺さっているようなイメージ。
この燃料棒と燃料棒の間に、制御棒を入れることによって、発生した中性子を間引き、燃料の核分裂を制御している。
制御棒を燃料棒の間に差し込むと核分裂が抑えられ、抜くと核分裂が激しくなる。
それが原子炉の制御の仕組みだ。
その仕組みが何らかの理由により壊れると、例えば冷却水がなくなって冷却されなくなると、燃料棒は自分自身の熱で溶け始める。
炉の底に溶けて流れ落ちた燃料は、制御棒を間に挟んでいないことになり、底に溜まった核燃料が一定量を超えると放置しておくだけで激しく核分裂を起こす状態となる。
この核燃料が炉の中で溶けて流れ出している状態がメルトダウンだ。
公表されている情報によると、福島第1原発の一部の原子炉では、今、まさにこの状態となっていると思われる。
(当初報道からこのブログアップ時点まで、ニュース等ではメルトダウンという言葉は使われていなかったが、事故当初から「燃料棒が冷却水から露出しており、一部損傷している。」と報道されており、言い方を変えれば「メルトダウンを起こしている。」と同義語だった。2011/05/16追記)
そして、臨界というのは、どの様な状態だろうか。
核燃料が自然に崩壊し、その時に発する中性子が周りの燃料にぶつかり、ぶつかった核燃料はさらに核分裂を起こし崩壊していく。
核燃料の量が少ないと、自然に放置しておいても核分裂は次第におさまっていくのだが、プルトニウムの場合で16kgを超えると、激しく核分裂が起こり、核分裂が次の核分裂を起こす連鎖反応が起こる。
連続的に核分裂が続き、激しくなっていく状態を、臨界状態という。
今回の原子炉事故でも、この臨界状態を避けるために懸命の冷却作業を行っている。
冷却作業ができないと、燃料棒の温度が上がり、さらにメルトダウンを起こし、炉の下部に溜まった核燃料が一定量を超えると臨界状態となり制御不能となる。
チェルノブイリではこの臨界状態となり、しかも長時間露出したままの状態が継続された為に被害は広範囲に広がり悲惨な状況となった。
福島第1原発は燃料棒の臨界量に達する損失を食い止めるために、今日も必死に冷却水での燃料棒の冷却を続けているところだ。
臨界状態となってしまった場合、連鎖的に核分裂が進み、制御することは非常に困難になる。
中性子が爆発的に飛びまくり、人が簡単には近づけない状態となってしまう。
爆発的に、という言葉を使ったが、核爆発を起こす訳ではない。
核爆発というのは、核爆弾という特殊な構造の中で瞬間的に核分裂を起こさせることで起きるもので、メルトダウンや臨界によって起こるものではない。
福島第1原発で起きた何度かの爆発は、核爆発ではなく、水素爆発だ。
この水素爆発は、燃料棒を包んでいるジルコニウム合金が損傷し、水蒸気と反応することによって発生する水素が爆発したもので、この爆発自体では放射線は発生しない。
ただ、爆発の衝撃によって、建屋が壊れたり、その他の設備を破壊してしまうので、建屋内に溜まっていた放射性物質が飛び散ったり、冷却が予定通り行えなくなるなどの影響が起きた。
水素爆発という言葉で、水素爆弾を連想する方もいる???かもしれないが、水素爆弾は構造が根本的に違います。
巨大な球の周りに核爆弾を仕掛けて、その圧力で中心部に核融合を起こす仕組みなのが水素爆弾だ。
水素と酸素の混合気体が爆発するのとはわけが違う。
原子力発電の安全神話が崩れたとか、いろいろ言う人はいるけども、人の作ったものは必ず壊れる。
事故は減らすことはできるけど、なくすことはできない。
めったなことで、僕は絶対という言葉は使わないが、人の作ったものはいつかは絶対に壊れる。
悔やまれるのは、なぜ、一か所にまとめて作ってしまったか?だ。
そして、なぜ、地震の起きやすい場所に作ってしまったか?だ。
いずれも答えは同じ。
地域住民を説得できた場所に作ったから、ただそれだけ。
そこがたまたま、地震が起きやすくとも、他に作る場所がないので、そこに作る。
そして、地元も核施設を受け入れることで補助金として百億単位の金を得る。
一度見た夢は忘れられず、2号機、3号機・・・7号機、8号機を誘致することになる。
詳しくは過去ブログをお読みください。
今はただ、過去の事をとやかく言うよりも、ひたすら臨界事故を防ぐことが先決だ。
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