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秋の夜長をどう過ごす?

「もしドラ」読みましたー。
書店で手に取った時に中年のおじさんとしてはちょっと躊躇する表紙ですが勇気を奮い立たせて購入しました。(萌え系イラストの表紙なのだ。)

ちなみに「もしドラ」は「もし配牌がドラ3だったら?」の略ではありませんよ。
「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」という、とっても長い題名で、略して「もしドラ」です。

文章は平易で、トータル数時間位で読み終わってしまいました。
通勤電車、往復3回分で読み終わるって、言ってもわからんかな?
(ちなみに通勤時間は、片道1時間20分、乗換え1回です。)

amazonの書評をみると、評価は両極端ですねー。
小説としての完成度としてみたら、評価は低い。僕の評価も高くはない。
展開はトントン拍子すぎるし、文章表現もそれ程上手いとは思わない。
と書きつつ、読み終わるまでに2度ほど、目がうるっと、してしまったのだが。

しかし、ピーターFドラッカーの入門本として評価するなら、高評価の付く書籍だと思います。(「もしドラ」のドラはドラッカーのドラです。)
僕は後者だと思って読みましたので、高評価ですー。

この「もしドラ」の元となったドラッカーの原典は「マネジメント」という本で遥か30年以上前に書かれたものです。(実際はそれの概要まとめ本。)
実は私も20年前に読みました。

当時私は大学の商学部に籍を置き、経営コンサルティング会社への就職を目指して就職活動をしていた。
なので、ボストンコンサルティングとかマッキンゼーなんていう単語に微妙に反応しつつ、大前研一とか船井幸雄とかの本を読み漁っていた。
そんな中、逆光のはげ親父が表紙に印刷された彼の本はインパクトがあったと思います。(逆光のはげ親父の表紙は、同著者の別の本かも。。。)

「マネジメント」の内容については、正直、あまり覚えていません。
恐らく余りに自分のレベルが低く、ただ読んだというか、活字を追いかけただけで、理解できてはいなかったのでしょう。

ドラッカー本って、さらっと読んでも、頭には入ってこないのですよ。
言い回しというか、使う単語がむずかしいのね。
平たく言うと、漢字が多い。

一文一文を噛みしめて読むという、ご飯を一口あたり50回ずつ噛みしめる様な作業を続けないと、完全理解はできない。
だからこそ、日本を代表する様な経営者達が何度も読み返す本として、この本を挙げる人が多いのかもしれない。

飯島延浩は従業員の心が離れ、離職が相次ぎ、その上、過去最大の設備投資を行って建設した工場が全焼した。そんな中から再起できたのもドラッカーの考え方を学んだおかげだ、と語る。製パン業界最大手の山崎製パン社長だ。
資生堂名誉会長の福原義春は、「ドラッカーの著作は私の為に書いてくれたかのような内容だ」と言い、さらには「彼の考えはすでに私の中で一体となり、口をついて出る言葉がもはやどちらのものか、わからなくなっている。」とまで言う。
スクエアエニックスの和田社長は、社内で管理職になる社員にはドラッカーの「経営者の条件」を読ませている、とか。とか。

他の経営学者の書いた本と違って、読者層が幅広く、中には熱狂的な信者?
もいるピーターFドラッカーって、何が違うのだろうか?

一般的な経営学者の書いた本は概念の話であったりして、明後日の経営には役に立っても、明日の経営には役に立たない本も多い。
ドラッカーの本は、今、どうすべきか?に結論を与えてくれる内容が多い。
具体的な判断基準というか、指針の基になる考え方を説いているものが多い。
だから、今目の前で直面している問題の解決法の糸口になり得るのだ。

それでいて、技術的な「いわゆるHowTo本」ではない。
経営学者ではないがロバートキヨサキとか、橘玲の様な実践に直結した話ではないため、時間が経っても色褪せない。
ロバートキヨサキや橘玲の本は、具体的であるが故に有用でもあるのだが、国が違ったり、制度が変わったりすると、そのまま実践はできなくなる。

その点、ドラッカーの本は、むしろ哲学に近いかもしれない。
技術論ではなく、考え方や着目点、判断するポイントを説いている。
特に経営といっても、営利企業に限らず、非営利組織も含んだ様々な組織を構成する"人"について、書かれている部分が多い。
どうしたら、気持ちよく人が動くのか?生き甲斐を持ってその組織の活動に打ち込むことができるのか?を書いている。
だから、30年以上前に書かれたにもかかわらず、色あせない。

でもねー。分厚くって難しい本っていうのは、無理よ。駄目。
装丁の段階でNGですね。残念ながら。。。

この「マネジメント」は日本では3人の人が翻訳している。
つまり、3社から出版されている。
最も定評あるのが上田さんという翻訳者で、ドラッカーからの信任は厚いし本も厚い。本が厚いのは上田さんのせいではないが。
しかも、その厚い本が、上中下の3冊に別れている。
積み上げると完全に立体の構築物となり、高すぎて枕にもならない。
たぶん、この高さでは、寝違える以前に、眠れない。

その本からエッセンスを抜き取って1冊にまとめたものが、「もしドラ」の主人公みなみちゃんも購入した「マネジメント エッセンシャル版」というもの。こちらも前述の上田さん翻訳の本です。
マネジメントの1400ページをわずか300ページに凝縮してあるのだ。
(枕にするには、これだと逆に、ちと薄いな。)

さらにー、このエッセンシャル版を中学生でも理解できる様に平易に訳して書いたのが、この「もしドラ」こと、「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」という長い題名の本です。
題名は長いけど、本文は読みやすいぞ!

内容は小説形式になっていて、簡単にあらすじを紹介すると野球部の女子マネが間違ってドラッカーの「マネジメント」を買って読み始める。
途中で、野球とは関係ない本だと気付くが2千円も払って買ったのだから、、、と読み進める。
そうすると、高校野球部でも応用できる文言があちこちに発見でき、それを実践していく話だ。

毎回1回戦負けの野球部を、甲子園に行けるまでに育て上げるドラマ。
「野球を通して感動を与えるのが目的」で「『送りバントとボール球を打たせる野球』が、今の高校野球をつまらなくしている」というテーマは面白い。

各メンバーの性格設定に応じた施策などは、具体的でリアリティーがある。
東大野球部出の優秀な監督は部員とのコミュニケーションが取れず本領を発揮できない。エースピッチャーは実力はあるのだが、心に脆いところがあり、また、本心を誤解されがち。足の速さを見込まれてレギュラーを獲得した選手はそれを引け目に感じていた。
他にもいろんな人物が出てくるのだが、問題解決していく過程で、ドラッカーの「マネジメント エッセンシャル版」からの引用文が、そこかしこに出てくる。
(原典の引用ページ数の記載もあるので、並べて読んでも良いかもしれない。)

話の内容は、現実とはかけ離れたほど、トントン拍子に巧くいきすぎてしまって逆にリアリティがなくなってしまっているが、一つひとつの施策をドラッカーの文章を読み解く事例として捉えると、非常に分かり易い解説書になっている。
なので、この本は小説として読むのではなく、ドラッカー理論の具体的な事例を挙げた解説書として読むのが正解だ。

ちなみに「もしドラ」の著者「岩崎夏海」ちゃんは短髪のおっちゃんですので、お間違えなく。
この岩崎さんは秋元康に師事してAKB48のプロデューサーを務めた人らしい。
ゴッツイ顔して、なんでペンネームは「夏海」なんだろう。

何らかの組織にかかわる方は、是非、この機会にお読みくださいませ~。
手軽に「もしドラ」でも良いし、ちょっと真面目に「エッセンシャル版」も良い。
本格的に「マネジメント3部作」に取り組むも良し。(←僕は無理~♪)

さて、秋の夜長をどうして過ごす?

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