連日、テレビ等の報道では中国各地での反日デモの様子が伝えられていますね。
その報道の中で、「当局の取り締まりによりデモは鎮圧した模様です」というアナウンスがあるたびに、僕は苛立ち不愉快な思いにとらわれます。
そもそも、中国ではデモというものが禁止されています。
もっと正確に言うと、政府の意に反したデモは禁止されています。
なので、公安当局が鎮圧しようとしまいと、あらかじめのシナリオ通りであるだけなのです。(本当に鎮圧しようと思ったら自国民を戦車で踏み潰します。)
そんなことは、日曜午前の報道番組を見ていれば、誰でも知っていることではありますね。。。
では、なぜ、今、反日デモなんでしょう?
尖閣問題があるから?
私は答えはノーだと思います。
なぜなら、尖閣問題は中国が完全に勝利した稀有な例であり、今更尖閣問題の為に反日デモを起こす必要性がないから。
中国は近隣諸国に対して、様々な言いがかりをつけていますが、それがあれほど成功した例はないでしょう。
尖閣諸島の領土問題というものが、あたかも昔から問題としてあったものの様に、世界中に人々に印象付けることに成功しましたから。
なので、中国にとって成果を挙げた尖閣諸島の問題に固執する必要はない。
私が思うに、中国の民主活動家、劉暁波(りゅう・ぎょうは)氏のノーベル平和賞受賞の問題が根っこにあると思うのです。
ちなみに世界中は尖閣諸島の問題なんてこれっぽっちも気にかけてはいません。
既に終了した話であり、日本も弱気だったところをみると言えない何かがあったんだろう、という感覚でニュースは人の記憶から消えていっていることでしょう。
もう、今さら何を言っても、これまでの日本政府の対応は消えません。
明らかに中国側の漁船がぶつけてきていたとしても、今さらビデオ公開したってこのタイミングでは遅きに逸しており、ビデオテープを捏造したと中国は主張するのが落ちでしょう。
中国が世界中に、特にアフリカ地域でばら撒いている金はこういう時に活きる。
アフリカ諸国にとって日本と中国の無人島を巡るいざこざなど、ソマリアとエチオピアのいざこざよりも、ずっと小さなものに映っているでしょうから。
(身近なものではない、という意味で。逆もしかりという意味でもある。)
彼らにとってはどうでもよいことで、どこか国連とかで争うとしても、中国の方がたくさんお金を落としてくれるなら中国に一票を投じる国も出てくるはず。
それが中国の狙いであるし、この問題は狙い通りに事を運んできた。
それに対してノーベル平和賞というと、一応、世界中の国々が注目するわけで、その影響は大きい。
各国首脳は元より、著名人もこぞって劉氏の釈放を要求している。
海外の国々などには意を返さない中国でも、自国の元共産党幹部や新華社通信の元幹部などによる民主化要求の動きに対しては無視してもいられない。
http://p.tl/d7mn
足元から政権基盤が崩れる兆しに繋がりかねないからだ。
が、今はどうか?
中国全土を反日デモが吹き荒れるという状況にすることで、一人の反体制家の釈放の話などは、十分に薄れてしまっている。
その意味では、中国政府はこの問題でも、十分に成果をあげている。(実際に吹き荒れているかはわからないが中国当局の報道では吹き荒れていると言っている。)
もっとも、中国が世界中に伝えたい事は、反日デモが盛んに行われているという(捏造された?)事実であり、本当に自由にデモができる国であれば、この国の言論は基本的に自由である!と主張したいのだろう。
そうすることによって、国内の民主活動家達をけん制することができる。
そこに自由な民主主義があるなら、民主活動家は存在意義を失う。
政府はそれを目指しているのだと思うのだ。
話は少しずれるが、日本のノーベル賞に対する認識もどうなのだろう?と思うことがある。
まず、ノーベル賞とは中立な国際機関が選考するものではない。
ダイナマイトを発明したノーベルさんの遺産の利息で運営される組織だ。
そこまでは知っている人も多いだろう。
だが、そのノーベル賞の選考についての報道は少ない。
選考は、物理学賞・化学賞・経済学賞の3部門については、スウェーデン王立科学アカデミーが行う。生理学・医学賞はカロリンスカ研究所が行い、文学賞は、スウェーデン・アカデミーが行う。
最後に平和賞についてはノルウェー・ノーベル委員会が、が選考を行うのだが、このノーベル委員会はノルウェー国会が任命する組織なのだ。
平和賞のそもそもの生い立ちは、スウェーデンとノルウェーの和解と平和を祈念して創設されたため、他がスウェーデン主体だがこの賞だけはノルウェー国会が任命する委員会による選出という、変なかたちを取っている。
そんなん、ノルウェー政府の意向が影響しないわけがないじゃん。
もちろん中立とはうたっているものの、任命するのは国会だからね。
佐藤栄作がノーベル平和賞を受賞した際も、ノルウェー政府への強力な政治工作が問題になったけど、ノルウェー政府が選考に対して純然たる力を持っているのは確か。
だから、中国が強硬にノルウェー政府を脅迫したのは戦法として間違ってはいない。
中国は間違いなく現状を認識している。
一部報道では「たまたまノルウェーに選考委員会があるということで、ノルウェー政府に抗議するのはおかしい話で、中国のうろたえぶりが...」なんて言われていましたが、まったくもって、ジャーナリズムというには程遠い見識しか持ちあわせてはいないお方の言葉と言わざるを得ない。
ノルウェー政府の意向が大いに加味された上での受賞ですよ。あれは。
ではノルウェー政府は、地球の裏側の中国に、何を恐怖したのか?
世界デフレの元凶である中国の安い製品は地球の裏側まで席巻している。
でも、そんなのは今に始まった話ではない。
決め手は「レアアースの実質的な禁輸措置」だと思う。
中国はこのレアアースの問題では禁じ手に手を出している。
これまで政治の世界では目を覆いたくなるような汚い手でも、各国政府間で行われてきた。
しかし、それは政治の世界の話であり経済に持ち込むのは禁じ手だ。
(ヨーロッパはロシアの天然ガスで痛い目を見ているから猶更だろう。)
経済は各国民に直結しており、直接被害をこうむるのは民間人だ。
なので、圧倒的な軍事力で世界に君臨するアメリカ合衆国ですら、経済制裁を行うには各国のコンセンサスを整えた上でないと実施しない。
それを今回、中国は世界生産の9割を握るという優位性を使い、自国だけでブロック経済を敷いた。
正式には禁止措置は取っていないと否定しているが、現実に輸出されてはいないわけで、共産主義である中国は全てが国営企業でもあり、各企業の事情のせいにはできないことは言うまでもない。
ブロック経済の行きつく先は第二次世界大戦で嫌という程、骨身に染みたはずなのに、この国はまだ認識していないのか。
中国の暴挙を許してはいけない。
北欧ノルウェー政府からのメッセージは正しいと思う。